三つの間(時間・空間・仲間)を考える

Autor わたにい

三つの間(時間・空間・仲間)を考える

 これまでちいろばの杜(以下、ちいろばと略す)は、森の中で食べるスタイルをとっていました。そのために、給食スタッフは、調理室でお弁当をこしらえます。それを必要なものを揃えて軽トラックに乗せ、手隙のスタッフが森まで運搬します。

 森で子どもたちは自分のお弁当を受け取る際に、一度中身を確認し、自分の裁量で量を減らすことも選べます。各々自分たちが今遊んでいる場所や、お気に入りの場所で食べ始めます。時に遊びが熱中している泥んこスペースの横でお弁当を食べる集団もいます。

時間としては大体11:50~12:20の間にお弁当は届くので、そのタイミングでお昼を食べ始める子もいれば、遊びの熱中度合いによっては、一通り満足するまで遊んでからお弁当を受け取る子もいます。まさに、「三つの間(時間、空間、仲間)」を選んで子どもたちはお昼の時間を迎えるわけです。森の「ゆったり・たっぷり・じっくり」が保障される空間では、このスタイルがとても素敵な空気感を生み出してくれます。子どもたちが自分たちで「選ぶ」という経験はとても大事です。そしてその為に、「ちいろばの暮らし」を考えるにあたって、前提としてこの「三つの間」が保障されていることが何より大事だと思うわけです。誰かの管理意識で場が成り立つのではなく、子どもも大人も自分で選べる機会がたっぷりある、自分のタイミングは自分で決める、自分の感覚を信じていく素地はこうした日常の中で育まれていくことでしょう。そして、自分の人生の手綱を自ら握っていく感覚は、食事時も例外ではなく、あらゆる生活場面から培われていきます。

園舎生活では、ビュッフェ形式を採用しています。森とは違い、ここでは各々が空の器を持ち、自分の量を自分で決めるという実践が2024年途中からスタートしました。冬は外で食べると、お弁当が凍ってしまうので、室内が主ですが、それでも日差しが感じられる日は、テラスで太陽光を浴びながら食べる子もいます。私個人は、各々が配膳をしているときに、ロフトの上でギターを弾きながら歌うのが好きです。「今日はこんな歌を聴きたい!」とリクエストを出してくる子どもの想いに答えて、気持ちよく歌っています。

「食と共にある」こうした光景も、ちいろばの風景となって子どもたちの心に染みていけばと願っています。

「ちいろばの食について」

ちいろばは、2021年4月より認定こども園となりました。これまでは各家庭が子どもにお弁当を持たせてくれた生活から、立派な給食室が完備され、素敵な給食スタッフが毎日給食を作ってくれるようになりました。

新規開園当初、「有機つながり給食」という名前で、ちいろば給食のコンセプトを打ち立てました。この中で大事にしたかったのは、「作り手の人となり、つながりが子どもにもわかる食材、調味料を極力使っていく」というものでした。

 スーパーやお惣菜やコンビニ弁当に限界があるのは、その作り手やその想いが全く感じられないというところにあります。ちいろばは「ふるさとをつくっていく」という理念の下に、「人と人とが関わり合う、つながり合う」ことを大事にしたい想いの中で、「食」はとても重要なキーワードです。食べるときに、思わず作り手の笑顔が思い浮かぶような給食を子どもたちに提供したい、「つながりを楽しみ、つながりをいただく」給食を考えたい、というのが私たちの初めのコンセプトです。対話を重ねながら、幾度もこのコンセプトについて考える機会を持ちながら、ある時ネーミングを「ちいろばごはん」にしようとチームで一致しました。子どもにも親しみやすい呼び名で、もっとちいろばの食を、子どもたちが身近に感じてほしいとの願いを込めてです。

 現実は、中々うまくいきません。確かに、オーガニック野菜ほぼ100%、調味料にもこだわる給食は実現しました。生産者の子どもへの想い、給食スタッフの愛も満載です。ですが、子どもたちがこの目の前にある「食」をどう受け取るのか、どうしたらつながりを感じられるのか、ここは今でも大きな課題となっています。私たち大人も含め、「食」はある意味当たり前すぎることであり、どこでも手に入るものであり、そのありがたみを一瞬一瞬感じながら食べる「いただきます」の心は、社会全体の中でも失われつつあります。つながりを意識しにくい日常の中で、「食」への関心や関わりは、ますます希薄化してしまっています。この現状の中で、「三つの間の保障」という前提の上で、ちいろばの暮らしを通してどう子どもたちに「食」をつないでいくか、ここに目下大きな問いを持っています。

これに関しては、家族のように食を共に楽しむ意識を育みたいという大人の想いの中で、食べている途中に一度「いただきますの歌」を楽しく歌ったり、今日の食材を給食スタッフが子どもたちにアナウンスしたり、ホワイトボードに平仮名で今日のメニューを書いたりと、様々工夫をしていますがイマイチ伝えきれないもどかしさを抱えていました。

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